スペシャルインタビュー 東京女子医科大学大学院医学研究科 泌尿器科学分野主任教授  田邉一成先生

2013/01/09

東京女子医科大学大学院医学研究科 泌尿器科学分野主任教授  田邉一成先生  福岡県出身の田邉一成先生は、九州大学医学部を卒業後、国内でも有数の腎移植症例数を持つ東京女子医科大学で腎移植のスペシャリストとして活躍。現在は、東京女子医科大学泌尿器科主任教授として、腎移植から腎血管外科・泌尿器腫瘍・内視鏡手術などの多岐にわたる分野で、国際的に活躍する泌尿器科外科医の育成に尽力している。そんな田邉先生に、故郷の福岡の食、東京の食について語っていただいた。


本当の「博多の味」

 私は福岡県の久留米に近い町で育ち、学生時代は博多で過ごしました。博多といえば、豚骨ラーメンやモツ鍋が名物と思う方が多いですよね。ところが昔の博多ラーメンは、皆さんがご存知のものとはまったく別物。脂でギトギトのスープが特徴のように思われていますが、本来は、豚骨を使いながらもさっぱりと、臭みのないスープが博多のラーメン。そんな昔ながらのラーメンを出す店を見かけなくなってしまい残念です。モツも、私が子どもの頃は食べるものではなかったので、モツ鍋が博多名物と言われるのは心外。博多の伝統的な味とは、新鮮な魚介を使った鍋や味噌汁、鶏ガラスープを味わう水炊きなどのように、食材をシンプルに味わうものなのです。


筑後川の鮎は特別な味

 私の実家は筑後川のそばで、川魚も豊富でした。特に筑後川の鮎はスイカの香りがして、焼くと香ばしい香りを放つ。秋に獲れる落ち鮎で作る鮎めしも絶品。落ち鮎とは、産卵のために川を下る鮎のことで、卵に養分を取られ身が細っているため、夏の鮎より味が劣るといわれています。これを遠火でじっくりと炙り、水分を飛ばしたものが「あぶり鮎」という保存食。これを使った鮎めしは、鮎の香りが凝縮されていて、信じられないほど美味しい。今では作られなくなってしまったようなので、幻の味といえるでしょう。


東京の味、博多の味

 九州大学医学部を卒業した2年後に東京女子医大の泌尿器科に入局し、東京で暮らし始めました。そこで初めて鰻、寿司、蕎麦の美味しさを知りましたね。逆に、東京に来てから価値に気づいた博多の味もあります。まず魚介類の鮮度。鮮度だけで味も食感も違うということに気づきました。博多で一番のご馳走であるアラ(クエ)のしゃぶしゃぶも東京では見かけたことがありません。


一生続く食べる楽しみ

 一生のうちに摂れる食事の回数は限られていますから、毎回の食事を大切にしたい、と誰もが思うでしょう。私の専門は慢性腎不全の患者さんへの腎臓移植です。腎臓病の患者さんの食事は、食塩、蛋白質、水分、カリウムを多く含んだ果物や生野菜などが厳しく制限されます。こうした患者さん方が腎臓移植を受けた後に「これからは好きなものが食べられるんですね」と、心からうれしそうにおっしゃるんです。私はその笑顔を見るたびに、好きなものが食べられることの大切さを感じます。いつまでも美味しいものを楽しめるよう日々の体調を気遣い、毎日の食事を大切にすることが、健康につながっていくのだと思います。

東京女子医科大学大学院医学研究科 泌尿器科学分野主任教授  田邉一成先生

« 山形の地酒に魅せられて 佐野洋一さん(山形県鶴岡市) | メイン | 食文化と私 »