森を育てて、お菓子を創る 中村雅夫さん(埼玉県秩父市)

2013/08/01

201308_theme02_01 「秩父 中村屋」中村雅夫さん

秩父産のメープルシロップをお菓子に

埼玉県の北西部に位置する秩父市は、土地のほとんどを森林が占める緑豊かなまち。長年「市の木」として親しまれてきたイチョウに代わり、2005年に新たに制定されたのはカエデ。国内で確認されている26種のカエデのうち24種が秩父市に自生しているという。そこに目をつけたのが、市内のお菓子製造業者による「お菓子な郷(さと)推進協議会」。カエデの樹液からつくる国産メープルシロップを「秩父カエデ糖」と名付け、各社でそれぞれカエデ糖を使った新しいお菓子の開発が進められた。大正時代から続く和菓子店『秩父 中村屋』の3代目・中村雅夫さんも、この取り組みに参加している1人だ。「協議会の16社が特徴のあるお菓子を開発する中、当店ではマシュマロの中にゼリー状に加工したメープルシロップを入れた『ちちぶまゆ』というお菓子を考案しました。和菓子店ですが、この洋菓子を販売してみるとお客さんの反応は上々で、2008年以降3年連続でモンドセレクション銀賞を受賞することができました。

形と製法にこだわり唯一無二の商品を

『ちちぶまゆ』の特徴は、何と言ってもその形にある。それについて中村さんは「秩父の伝統工芸として有名な『銘仙』は絹の染織物。その原料である〝まゆ〞の形をしたお菓子を作りたいと思いました。かなり数は減ってしまいましたが、今も秩父には養蚕農家があり、銘仙も織られています。銘仙とカエデ糖という古い良いものと新しいものとをコラボさせた商品を作りたかったんです。ところが、マシュマロをたわら型にするのが大変でした。『ちちぶまゆ』は機械生産。他に追いつかれないよう、簡単には真似できないハイエンドの生産方法で生産効率を高め、全国に販売したいという思いがあり、工場の床が真っ白になるくらい試作と失敗を繰り返しました」と語る。


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秩父カエデ糖を使ったマシュマロ菓子「ちちぶまゆ」

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大正時代創業、趣のあるお店


外よりも地元に目を向けて

「この8年間、外へ売る事ばかりを考えていた」と、中村さんは言う。「調査したところ『ちちぶまゆ』が地元の3割の人にしか知られていないことがわかりました。そのため、秩父には11万人もの人がいるのだから、その人たちに目を向けなければと考えるようになりました。さらに地産地消ではなく地産全消、ここにしかないものとして、ここに来て食べてほしい。薄くてもいいから、みんなが儲かるように。林農工商それぞれが役割を分担して特徴ある商品を作り連携を高めていくことができれば、やがて地産地商へと結びつくはずという思いが高まりました」。

古き良きもので新たなる挑戦

中村さんは現在も、地元の産物を使った新しいお菓子の開発に挑戦し続けている。「ある農家が手のひら分だけ残して守り継いできた在来種の大豆を、県が引き受けて生産数を伸ばすことに成功しました。植えれば植えるほど実がなり、借金を返すことができることから『借金なし』と呼ばれる縁起のよい豆です。そこで創業以来のお菓子の復刻版として、新たにこの大豆を使った『縁起まめ』という豆菓子を作りました。現在、他にも豆腐や味噌など6社で7商品が販売されています。私は菓子職人として、一生一品を世に送り出したいという思いがありますが、どの商品がそれなのかまだわかりません。ただ、地域の農産物、林産物を使ったお菓子を世に送り出すという方向性には『これだ』という手応えを感じています。投げ出したくなることもあります。でも古き良きものを守りながらも、やはり常に革新が必要だと思えるのです」。


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「秩父 中村屋」

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「秩父 中村屋」

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